睡眠時無呼吸症候群の治療について−適切な治療を見つけるために−

1.はじめに
2.睡眠時無呼吸症候群とは
◇睡眠時無呼吸の原因としくみ
◇どのような検査が必要なのか?
◇治療すると、どのような利点があるのか?
3.治療の方法
3-1.生活習慣の是正(寝る時の姿勢、体重の減量、飲酒など)
3-2.経鼻的持続陽圧呼吸療法装置(nasal CPAP)
4.治療後のケア

1.はじめに

睡眠をとることは単に日中の日常生活から離れることではありません。心や身体の疲れをとり気力や体カといったエネルギーを充足するために、欠くことのできない積極的な行動です。また、睡眠には病気を治したり、成長を促す効果もあることがわかってきています。

もし、十分な睡眠時間をとっているのに昼間に眠気があったり、起床時に倦怠感や頭痛があるならば、睡眠時無呼吸症候群の症状かもしれません。ここでは、睡眠時無呼吸症候群の概要と、一般的な治療法について説明しています。もし、睡眠時無呼吸症候群が疑われるなら、早期に専門医を受診し症状にあった治療を受けて下さい。

2.睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に何度も呼吸が止まった状態(無呼吸)が繰り返される病気です。いびきや不眠、夜間睡眠中に目が覚めたり(夜間の中途覚醒)、起床時の頭痛、日中の眠気などの症状があります。また、高血圧の他、不整脈などの循環器系の障害、呼吸器系の障害などの合併症を引き起こすこともあります。そのうえ、日中の眠気のため、居眠り運転による交通事故などを起こしやすく、治療をせずに放置しておくと、生命に危険が及ぶ場合もあります。適切な検査とそれぞれの患者さんに応じた治療が必要です。

■睡眠時無呼吸の原因としくみ
睡眠時無呼吸は、多くの場合、空気の通り道である気道が、部分的あるいは完全に閉塞してしまうことによりおこります。そのため、睡眠時無呼吸は肥満体の人、首が短くて太い人、顎が小さい人などに多く、もともと気道が狭い構造になっている上に、睡眠中には、咽頭の筋肉や舌(これも大きな筋肉です)が緩みさらに気道が狭くなっておこってくるのです。そのような状態で息を吸うと、肺で生じた陰圧によって狭い気道は一層狭くなって閉じてしまいます。ストローの端を指でふさいで吸ってみて下さい。ストローはつぶれてしまいます。これと同じようなことが睡眠中の上気道でもおこり、睡眠中の無呼吸が発生します。

■どのような検査が必要なのか?
睡眠時無呼吸症候群の原因や重症度を調べたり、治療方法や処方を決定するためには十分な検査が必要です。在宅で行える簡便な方法もありますが、一般的には一晩入院して、いろいろな電極やセンサーなどの検査端子を身体に取り付けて眠り、睡眠状態を調べるポリソムノグラフィー(PSG)という検査を行います。ポリソムノグラフィーでは、脳波と心電図、胸部・腹部の動き、鼻からの空気の流れ、動脈中の酸素飽和度などを連続して記録し、翌日に医師が診断します。

■治療すると、どのような利点があるのか?
睡眠時無呼吸症候群を治療すると、日中の眠気や倦怠感などの症状だけでなく、睡眠時無呼吸症候群による合併症を予防したり改善することが可能です。しかしながら、その治療法は、単に薬を服用するだけで治療できるものではありません。また、睡眠時無呼吸症候群の重症度や患者さんの症状に応じた治療が必要になります。 ここでは、睡眠時無呼吸症侯群の治療法について説明してありますが、治療法の選択については主治医と十分にご相談してください。

3-1.治療の方法 生活習慣の是正(寝る時の姿勢、体重の減量、飲酒など)

生活習慣の中には睡眠時無呼吸症候群を悪くするものがあります。一部の人にとっては、生活習慣を変えるだけで、睡眠時の無呼吸が減ったり、あるいは無くなってしまうこともあります。

■睡眠中の体位の工夫
仰向けで寝ると身体のすべての部分に下向きの重力が加わります。そのため、舌や咽頭の上側の筋肉や軟口蓋は、咽頭の下側と後側の壁にくっつこうとします。この状態では空気の通り道である気道は、狭くなるか完全にふさがってしまいます。したがって、そうならないように身体を横向きにしたまま寝るように工夫してみると症状が良くなることがあります。睡眠中の体位を保つためにいくつかの方法が考案されています。もっとも簡単なものにテニスボール法があります。この方法は、パジャマの背中側の首下にポケットを縫い付けて、その中にテニスボールを入れます。睡眠中に寝返りをうちはじめると、背中のボールがあたって刺激となり、身体の向きを元に戻すという仕組みです。身体の向きが変わるとアラームが鳴ったり、振動する装置もあります。しかし、中等度から重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、横向けに眠っても睡眠中の無呼吸は減らない場合が多く、体位を変える方法は有効ではありません。また、軽症の方でも効果がないこともありますので、主治医に相談しながら取り組んで下さい。

■減量
一部の睡眠時無呼吸症候群の患者さんには、減量が有効な治療になることがあります。食事のカロリーを減らし、運動量を増やします。食事では、脂質や糖質を控えましょう。また、間食や飲酒を減らし、規則的な食事を心がけましょう。しかし、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、日中の眠気があるために運動量が減少し、実際には減量が難しいこともあります。体重のコントロールが困難なことも睡眠時無呼吸症侯群の症状の一つと考えられています。
いびきや睡眠中の無呼吸は、体重が増加して元に戻るとまた元の状態に戻ってしまいやすいので、減量ができても、その体重を維持することが大切です。体重を減らすための食事指導は病院の栄養士から受けられます。

■禁煙
喫煙は、血中の酸素を低下させ、咽喉頭部の炎症をおこし、睡眠中の無呼吸に悪影響を与えます。肺ガンの予防など他の健康のためにも禁煙をおすすめします。

■飲酒や精神安定剤の服用を控える
就寝前の少量のアルコールでも、いびきや睡眠中の無呼吸を悪化させることがあります。就寝前の少なくとも4時間は飲酒を避けることが必要です。アルコールや睡眠導入薬、抗不安薬、筋弛緩薬などの精神安定剤及び類縁薬剤は、普通の状態より、咽頭の筋肉を緩め、気道の閉塞を引き起こしやすくします。アルコールや精神安定剤は、脳の目覚めを悪くさせるために、身体に危険な長い無呼吸を増加させます。 しかし、こうした薬剤は服用が必要な場合もあります。一方、急に服用を中止することによって、その反動が出現することがありますので、服用を控える場合は、主治医にご相談ください。

3-2.治療の方法 経鼻的持続陽圧呼吸療法装置(nasal CPAP)

経鼻的持続陽圧呼吸療法装置 (nasal CPAP:nasal Continuous Positive Airway Pressure 以下CPAP(シーパップ)と略す)は、一定圧を加えた空気を、鼻から送り込むことによって、上気道の閉塞を取り除き、睡眠中の気道を確保する非常に有効な治療法です。ほとんど全ての睡眠時無呼吸症候群の患者さんに有効で、多くの患者さんへの治療の第一選択とされています。

■機器の概要
CPAPは、送風ファンによって、患者さんの気道閉塞の程度に合せた空気圧をエアチューブ・鼻マスクを介して、鼻から気道へ送り込みます。ハンドバックぐらいの大きさで、重さは機種によって異なりますが約1〜3kgですので、旅行の時などにも持ち運ぶことができます。

■効果のしくみ
CPAPは常に上気道に陽圧をかけつづけることにより、軟口蓋や舌を押し上げて気道を広げ、無呼吸の発生を防ぎます。副作用はほとんどありませんが、のど・鼻の渇きや、マスクの締め付けすぎによる痛みが生じることがあります。

■導入にあたって
一般的には、睡眠時無呼吸症候群と診断を受けた後、もう一晩入院し、CPAPを使用して眠り、検査を行ないながら、適切なCPAPの空気圧を医師が処方します。

■快適に使用するために
多くの患者さんは、CPAPを使用することによって快適な日常生活を過ごされていますが、空気圧による不快感や、鼻の乾燥、騒音などによって、継続使用が困難な患者さんもいらっしゃいます。しかし、はじめは不快でも徐々に慣れてきますし、以下のような工夫で不快感が解消できることも多いので、担当医と相談のうえ取り組んでください。
鼻マスクの選択
顔に合った鼻マスクの選択は、治療効果を上げるためにも、快適な睡眠をとるためにも重要です。鼻の形や大きさ、顔の形にフィットしたものを使用しましょう。
のど・鼻が渇く場合
加温加湿器を使用すると、快適に使用できることがあります。
圧が不快で寝付けない場合
鼻マスク装着後、目覚めている問は、空気の圧力が不快に感じられます。圧力を徐々に上げていくディレイタイマー機能を使用することで、入眠しやくなります。ディレイタイマーは、最長20分程度まで、必要な圧力に達する時間を遅らせることができます。

■お手入れの方法
日常のお手入れは、毎日使用した後に鼻マスクを湿らせた布で拭くこと、1〜2週間に1度は鼻マスクやチューブを中性洗剤で洗うこと、3〜6ケ月毎にフィルターを交換することです。

■健康保険の適用
CPAPの使用は健康保険の適用となってます。ただし、十分な検査を行い、基準を満たしていないと健康保険は適用されませんので、主治医にご相談ください。

4.治療後のケア

睡眠時無呼吸症候群のどのような治療方法を選択しても、自分で治療効果を判断するのは危険です。主治医と相談して、その有効性についてポリソムノグラフィー検査を受け、調べてもらうことが必要です。睡眠時無呼吸の重症度は、体重の増減や加齢にしたがって変化します。もし、いびきを再びかくようになり、日中に眠くなったなら、睡眠時無呼吸が悪くなった可能性があります。その際には、別の治療法を併用することが必要かもしれません。定期的に主治医の診察を受けることを忘れないようにしてください。

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